島コラム vol.8:リンクを追えた瞬間
東京都立広尾病院 内視鏡センター長 小山茂
もう20年以上前のことです。ある昼時に病室へ顔を出すと、前日に大腸の内視鏡手術を受けた女性が、ベッドサイドで男性と笑顔で話に花が咲いていました。その男性は糖尿病のコントロール目的で同じ病棟に入院されていました。どちらも同じ島からの紹介で、共に受け持っていた方々でした。
「幼なじみなんですよ。今内視鏡の話してて」
「ああ、そうなんですか」
「せんせい、もしよかったらぼくの大腸も診てもらえんだろうか」
「ええ、いいですよ」
検診も何回か受けていずれも陰性とのことでしたが、便通が気になるからとご希望になりました。数日後に検査してみたら、実にたくさんの大腸ポリープを認めました。何か所か内視鏡的に切除して、糖尿病のコントロールも改善したところで退院となりました。幸い外科手術となる代物はなく、年単位でフォローの内視鏡検査を受けに来て頂きました。再検の度にポリープ切除を実施し、実に手応えのある経験でした。
こんな具合に結果が得られると、こちらとしてもありがたいと感じます。最初の女性の方も、地元で懇意にされている事業主の方が手術になったのを契機に、精密検査の必要性が現地で急速に拡散し来られた方の一人でした。
他の島でも、同様にある住民の方がキーパーソンになって流れが形成されるのを経験したことがあります。診療所の医師が内地での検査の必要性を語り、来てみたら言われた通りだったとの手ごたえを掴んでお戻りになり、その後一気に口コミが広まる図式でした。続いて来る方々はそれなりに覚悟も決めておられ、こちらとしても身の引き締まる思いでした。
大腸検査に限らず、内地の患者さんに接しても、実はとある島とのつながりで当院の受診を選んだと、後々耳にすることがあります。人と人は時に想像を超えた関係を孕んでいます。
いい意味で「リンクを追えた」瞬間、それは島の方々に支えられているとあらためて実感する瞬間でもあります。
〔東京都立広尾病院広報委員会発行 広尾病院だより 第182号(令和2年12月発行)収載〕
*当記事は東京都立広尾病院より掲載許可を賜り、転載しております。
*Profile/小山茂(こやましげる):1986年自治医科大学医学部卒業後、