島コラム vol.2:観天望気の名手たち

東京都立広尾病院 内視鏡センター長 小山茂

内地にいると、交通機関が不通のため移動が翌日以降になる事はそう滅多にないでしょう。しかし島はそうはいきません。風向きや波の高さで桟橋が使えなくなれば船は接岸できず、やはり風向きや視程次第で飛行機は着陸できなくなります。これは観光などの時も大いに辛いことですが、日常生活の手段となればまた格別です。

私自身、島の出入りには涙を呑んで参りました。中長期派遣で過ごした島々はどこも居心地良くて快適でしたが、唯一の難点は個人的“足運”の悪さでした。それにまつわる笑い話は幾つもあり、後々代診や出張で島を訪れると「あらせんせい、ちゃんと予定通り来られたんですね」と当時を知る方からうれしい冷やかしの言葉を頂戴します。

どこの島にも天候の見極めに長けた方がおられ、各方面からの「明日出られるだろうか?」「ちゃんと着いてくれるだろうか?」などの問い合わせに対応されていました。内地の乗船前の人からの電話を受けることも度々だったでしょう。(私も散々お世話になりました🙇)

完全帰島後の三宅島に代診で赴いた際、中央診療所に大腸内視鏡が2本眠っていました。その後訪れる度に事前に募っておいて頂き、現地で検査を実施しました。

ある時島に向かう船が“条件付き”の荒れ模様で、行きの早朝は見事に欠航でした。八丈の港に朝着いて折り返し再度アタックしたところ、午後の帰りは何とか上陸できました。着いてすぐ診療所に向かい、予定被検者のうち1人検査を実施しました。その方は帰りの到着を見越して朝から前処置を始めておられたのです。残りの方々はその日着けないかも知れないという判断から、翌日以降に調整致しました。

大いなる自然の力の前では、ままならないことが色々とあるものです。設備改良が進んで就航率が上がっているとも耳にしますし、予報の精度もしかりでしょう。しかしこの時代でも、そういう役回りの実力者は各所においでだと思います。

〔東京都立広尾病院広報委員会発行 広尾病院だより 第177号(令和元年9月発行)収載〕

*当記事は東京都立広尾病院より掲載許可を賜り、転載しております。


*Profile/小山茂(こやましげる):1986年自治医科大学医学部卒業後、東京都立広尾病院にて初期研修。「島しょ医療」を重点事業の一つに据える同院にて消化器疾患を専門に内視鏡検査・治療に従事。2012年より同院内視鏡センター長。これまで利島、神津島等へ赴任、現在も八丈島等へ定期的に訪問し、内視鏡検査にあたっている。島しょ医療研究会世話人、島嶼コミュニティ学会理事。